腎臓病の種類

1. じん臓機能(eGFR)が正常から低下する程度によって解説します。

腎機能病気の種類解説
あまり低下しない1. 尿蛋白陰性の慢性糸球体腎炎
2. ネフローゼ(微小変化群と一部の膜性腎症)
3. 馬蹄腎などの腎臓の形だけの病気
4. 尿細管の病気
数年間eGFRが低下しない場合はその後も低下するリスクは少ないです。
10年以上かかって低下1. IgA腎症(尿蛋白陽性の場合)
2. 糖尿病(アルブミン尿の場合)
3. 高血圧・痛風・高脂血症などによる動脈硬化(尿蛋白陽性の場合)
4. 多発性のう胞腎
いずれも治療をすれば進行を止めたり、遅くすることが可能です。
数ヶ月から数年で低下1. 膠原病などの血管炎
2. 糖尿病(ネフローゼの場合)
3. 骨髄腫などの血液悪性疾患
糖尿病で腎臓の働きが30%以下になると進行を止めることは難しいです。1と3は腎臓だけでなく全身の病気なので高度な専門的治療が必要です。
数週間から数ヶ月で低下1. 急性腎障害
2. 水腎症
3. 急速進行性腎炎(血管炎)
急性腎障害は治療によって正常に戻ることも多い反面、原因によっては死亡率の高い病気です。水腎症は早く発見すれば治療が可能です。3は腎臓だけでなく全身の病気なので高度な専門的治療が必要です。

2. 慢性腎臓病CKDの重症度分類とは?

CKDガイドライン2012より転載

慢性腎臓病CKDはその原因となる病気に関わらず、腎臓の働き(GFR)と尿中アルブミンまたは尿中タンパク量の多少によって上の図のように重症の程度が分類されます。すなわち、緑は安全、赤は危険というわけですね。赤の危険というのはその後に腎不全まで悪化する可能性が高いということだけでなく、薬の副作用が出やすくなったり、心臓病や脳卒中になるリスクも高いということです。したがって赤の場合は腎臓専門医を受診しなければならないということになります。

3. 多発性のう胞腎とは?

遺伝性の腎臓病で一番多いのが多発性のう胞腎たはつせいのうほうじんです。この病気は常染色体異常という種類の遺伝で、兄弟、両親のどちらかやその叔父叔母祖父祖母がこの病気になっていることが多いのです。ただ30%ぐらいはそうした遺伝が見つかりません。腎臓と肝臓にのう胞が多発し、他にも高血圧、脳動脈瘤、大腸憩室、心臓弁膜症、そう胆管拡張症などが起きる危険性があります。eGFRが15以上あればトルバプタン(商品名サムスカ®️)が腎不全への進行を抑える働きがあります。この薬はとても高価なので難病の申請が必要です。1年間に5%以上腎臓の容積が増えることを証明すれば難病指定が受けられます。また脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血(脳出血の一種)を起こし生命の危険があるので5年に1回は脳MRI検査を行なって 動脈瘤を早期に発見することが必要です。

他に遺伝する腎臓病とは?

多発性のう胞腎の他にアルポート症候群と言って血尿と難聴を特徴として腎不全になる病気、ファブリ病と言って手足の痛み、心臓病、脳梗塞などを起こす病気などがあります。詳しくはそれぞれのホームページを参照してください。

アルポート症候群 東京女子医科大学腎臓病センター 

ファブリ病 国立成育医療研究センター

4. 糖尿病による慢性腎臓病とは?

現在 腎不全となって透析を始める人の原因で最も多いのが糖尿病による慢性腎臓病です。

早い時期に治療すれば大丈夫

ただ糖尿病になると必ず腎臓が悪くなるわけではありません。通常 健診で糖尿病の診断がついてから腎臓が悪くなり始めるまでに5年から10年はかかります。それまでにしっかり治療をしていれば腎臓や他の合併症は防げます。

腎臓が悪くなるきっかけとは?

ところが健診をしていなかったり、指摘されても放っておいたり、途中でいい加減な治療をしたりすると ある時期から腎臓が悪くなり始めます。実はこの時期の腎機能は100%より高くなるのです。すなわちeGFRが120とか高くなります。なぜかというと糖尿病のために腎臓が必要以上に働かせられるからです。そして尿にわずかにアルブミンがもれ始めます。これを早期に発見できるのが尿中微量アルブミン尿です。この時期にちゃんと治療すればまだ大丈夫です。禁煙・運動・塩分制限・体重管理が大事です。

尿蛋白が増え腎機能が低下し始める時期

ここまでに5年から10年かかります。そして徐々に腎機能が低下し始め、eGFRが60以下にまで低下してくると、尿にタンパクが増えてきます。腎不全になるのをストップできるのは現在の医療ではここぐらいまでです。ここまでくるとその後5年ぐらいまでに腎不全になります。

腎不全とネフローゼに

eGFRが45以下になるといくら治療をしても腎不全への道をストップできなくなります。ただ少しでも遅くするには、血糖値のコントロールはもちろんのこと、血圧をRAAS系阻害薬というタイプの降圧薬や糖尿病の薬の中で腎臓に効くことが証明されているSGLT2阻害薬を服用する必要があります。またむくみがひどくなるので利尿薬が必要です。

後悔先に立たず

糖尿病は放っておいたり治療をいい加減にしていると全身の細かい血管から太い血管までが動脈硬化に陥る病気です。このため毛細血管でできている腎臓の糸球体が壊されネフローゼになり、最後には腎不全となります。同時に脚の動脈が細くなり詰まって血流が障害され切断しなければならなくなります。他にも心筋梗塞や脳梗塞などで寿命を縮めることになります。

執筆:塚本雄介 2022.3.1