腎臓移植

Human kidney inside portable fridge for transporting donor organs, 3D rendering isolated on white background

腎移植を希望しています。移植を依頼する病院の選び方を教えてください。

移植を依頼する病院は十分な手術数ときちんとした学術的報告を行っていることを基準にすれば間違いないでしょう。学術的報告をしているということは、きちんと治療に取り組んでいる証拠となります。ちなみに私の所属する板橋中央総合病院臓器移植センターは日本で有数の腎臓移植を行なっており、またその後の管理も私たち腎臓内科も行いますので安心して受けていただくことができます。オンラインでセカンドオピニオン外来も行なっています。

腎移植を希望しています。移植外来に初めてかかった時に行うことを教えてください。

まずはここから始まります。臓器提供者(ドナー)、臓器受益者(レシピエント)ともに感染症の検査を行います。感染症によっては移植できないこともあります。そして2人の臓器が組織的に合っているかを調べる組織適合検査(採血)を行います。

腎移植を希望しています。移植までに行う主な検査につき教えてください。

移植までに行う主な検査としては、悪性腫瘍や心臓や血管に異常がないかを特に調べます。次に、脳ドックなどで頸動脈の狭窄や脳血管の異常の有無などもチェックします。

腎移植の臓器提供者(ドナー)に必至な条件は何でしょうか?

まずは生体腎では腎提供への自発的意思があること、十分な腎機能があることとなります。通常eGFR(腎機能の検査)が60ml/分以上あれば十分です。もちろん感染症があると慎重な対応が必要となります。最近問題となるのはドナーの肥満です。肥満は当然慢性腎臓病の原因となりますので術前に適正体重へ持っていくことが大切です。私どもは原則BMI25以下を基準としています。また、軽度の糖尿病、軽度の高血圧は十分コントロールが可能な場合は腎移植可能です。

社会的に認められない、または避けた方が良い臓器提供者(ドナー)とは?

社会的に認められない条件は、6親等以内の近親者ではない場合となります。そしてドナー本人の自発的腎臓提供の意思が確認されない場合となります。もちろん、金銭の授受が想定されるような場合は論外です。これらの必要な条件を満たすかの判定を手術前に精神科医が面接の上行うのが通例です。

組織適合性検査とは何を行いますか?そしてその結果がどのような場合に移植は可能ですか?

移植の成否はドナーの臓器とレシピエントの臓器がどれだけ相性がよいか(適合性という)で決定されます。この相性を調べる検査を組織適合性検査といいます。これにはHLA抗原の同定とリンパ球のクロスマッチが基本となり、採血で行うことが出来ます。今ではこれらの検査により移植後の拒絶反応がほぼ予測可能となりつつあります。もちろんクロスマッチが陰性であればほぼ問題ありませんが、クロスマッチが陽性(相性が悪い)場合であっても、現在では減感作療法という方法により腎移植が可能となりつつあります。

透析を開始する前に腎移植を行うことを希望しています。この場合クレアチニン値(腎機能の指標)がいくつ以上になったら腎移植が可能となりますか?

通常、クレアチニン値が常時5mg/dlを超えると腎移植を受けることができます。これは自治体により多少異なりますが公的医療補助が受けられるか否かにもよります。

腎移植の待機中の患者です。移植までに避けた方が良い治療などはありますか?

輸血はレシピエントを感作することになるので、できれば避けたほうが良いでしょう。しかし、医学的に必要であれば危険を避けるため輸血はしなければなりません。

多発性嚢胞腎が原因の血液透析患者ですが、腎移植には不適でしょうか?

全く通常通りに腎移植が可能です。ただし、術前に脳動脈瘤、僧房弁逸脱症、大腸憩室などの多発性嚢胞腎に特有な合併症についての検査は必要となります。また嚢胞が非常に大きい場合は嚢胞腎の摘出が事前に必要となることもあります。

糖尿病でインスリン治療を行っていますが、腎移植には不適ですか?

きちんとした糖尿病のコントロールが必要であることは言うまでもありませんが、通常どおりの腎移植が可能です。ただし、当然ですが糖尿病による合併症の術前の評価が重要です。ちなみにドナーの方が糖尿病の場合にはしっかりコントロールが出来ていて尿中アルブミン濃度が正常(30mg/Cr以下)であることが条件となります。

免疫抑制療法に伴って起きる死の危険性のある感染症を教えてください。

最近、感染症が大きな問題となることは非常に少なくなってきています。ただ、致死的となるとやはりニューモシスティス・ジベロッチ感染症となります。バクターという抗生物質による予防が事前に行われていれば問題ありませんが、そうでない場合は発見が遅れると致命的となります。それ以外ではまれですが水痘に初感染があります。これも早期発見、早期治療が重要です。

移植前に患っていた腎臓病が移植した腎臓に再発することがありますか?

あります。再発しやすい腎炎の代表は難治性ネフローゼ症候群で特に小児の場合にリスクが高くなります。腎移植前の血漿交換など治療を行うことで、その再発率は低下しています。IgA腎症という日本人に多い慢性腎炎も、再発しやすい腎炎の一つです。そして糖尿病のコントロールが悪くなれば移植した腎臓が糖尿病で再び侵されることになります。

腎提供者(ドナー)の移植手術に伴う死亡率と移植後長期間にわたるリスクについて教えてください。

ドナーの手術による死亡率については米国の統計でも非常に低いことが報告されています。本邦では腎移植手術に伴う死亡例の報告はありません。長期的にもっとも問題となるのは慢性腎臓病の発症でしょう。腎臓が一つだと負担がかかり慢性腎臓病になる場合があります。特にメタボ、糖尿病、喫煙、高血圧などがあるときはその危険性が高くなるのでこれらの改善に尽くすべきでしょう。そして定期的な健康チェック、特に血圧と尿検査が必要です。

生体腎移植の入院中にかかる平均的な自己負担分を腎提供者(ドナー)と腎受容者(レシピエント)の両者で教えてください。

レシピエントの医療費は透析と同様に保険(更生医療、身体障害者)でカバーできますから大きな支払はありません。ドナーの手術に伴う入院中の費用もレシピエントの保険で支払われます。

執筆:板橋中央総合病院腎臓内科 塚本雄介 2022.2.1