難病法について

新しい難病法で多発性嚢胞腎とIgA腎症が指定難病に!

平成26年法律第50号「難病の患者に対する医療等に関する法律」が決定され、それに基づき医療費助成が受けられる110の指定難病がさる10月21日に告示されました。

腎臓病領域では多発性嚢胞腎とIgA腎症があらたに指定難病に入りました。

これは極めて高額になる常染色体優性多発性嚢胞腎の治療を受ける患者には大きな朗報となります。これにより高額医療に対しては条件を満たしていれば医療費助成が受けられ、その所得により月額2千五百円から最高2万円までの自己負担額へと軽減が図られます。

本法は平成27年1月1日より発足しますが、難病指定医による診断書(臨床調査個人票)による認定申請が必要となります。

1.これまでの制度とは?
  1. 平成26年までの難病対策による医療費助成は「特定疾患治療研究事業(対象56疾患)および「小児慢性特定疾患治療研究事業(対象514疾患)」による政府の予算措置による医療費助成であり法制化されていなかった。
  2. 以上の対象とされていない「難病」は多く不公平感が有り、かつ安定的な制度になっていなかった。
2.新「難病医療法」のポイント
  1. 厚生労働大臣が「施策の総合的な推進のための基本的な方針」を策定
  2. 新たな公平かつ安定的な医療費助成の制度(指定難病)の確立
  3. 難病の医療に関する調査・研究の推進
  4. 都道府県は難病相談支援センターの設置、訪問看護などを実施
3.「指定難病」の条件とは?
  1. 「難病」とは、発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない。希少な疾病であって、長期の療養を必要とする事となる疾病。
  2. 「指定難病」とは、上記「難病」の内、患者数が人口の0.1%程度以下で、客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が確立している疾病。ただし、指定されても全員が医療費助成の対象となるわけではない。
4.医療費助成の第1次実施分110疾病とは?

平成27年1月1日より実施される110疾病は以下の表1です。腎臓分野では多発性嚢胞腎とIgA腎症が含まれました。

番号 病名 患者数
1 球脊髄性筋萎縮症 960
2 筋萎縮性側索硬化症 9,096
3 脊髄性筋萎縮症 712
4 原発性側索硬化症 175
5 進行性核上性麻痺 8,100
6 パーキンソン病 108,803
7 大脳皮質基底核変性症 3,500
8 ハンチントン病 851
9 神経有棘赤血球症 100未満
10 シャルコー・マリー・トゥース病 6,250
11 重症筋無力症 19,670
12 先天性筋無力症候群 100未満
13 多発性硬化症/視神経脊髄炎 17,073
14 慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチー 3,423
15 封入体筋炎 1,000
16 クロウ・深瀬症候群 340
17 多系統萎縮症 11,733
18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く) 25,447
19 ライソゾーム病 911
20 副腎白質ジストロフィー 193
21 ミトコンドリア病 1,087
22 もやもや病 15,177
23 プリオン病 475
24 亜急性硬化性全脳炎 83
25 進行性多巣性白質脳症 100未満
26 HTLV-1関連脊髄症 3,000
27 特発性基底核石灰化症 200
28 全身性アミロイドーシス 1,802
番号 病名 患者数
29 ウルリッヒ病 300
30 遠位型ミオパチー 400
31 ベスレムミオパチー 100
32 自己貪食空胞性ミオパチー 100未満
33 シュワルツ・ヤンペル症候群 100未満
34 神経線維腫症 3,588
35 天疱瘡 5,279
36 表皮水疱症 347
37 膿疱性乾癬(汎発型) 1,843
38 スティーヴンス・ジョンソン症候群 59
39 中毒性表皮壊死症 59
40 高安動脈炎 5,881
41 巨細胞性動脈炎 700
42 結節性多発動脈炎 9,610
43 顕微鏡的多発血管炎 1,942
44 多発血管炎性肉芽腫症 1,942
45 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 1,800
46 悪性関節リウマチ 6,255
47 バージャー病 7,109
48 原発性抗リン脂質抗体症候群 10,000
49 全身性エリテマトーデス 60,122
50 皮膚筋炎/多発性筋炎 19,500
51 全身性強皮症 27,800
52 混合性結合組織病 10,146
53 シェーグレン症候群 66,300
54 成人スチル病 4,800
55 再発性多発軟骨炎 500
続き

注1)青文字が新規疾患。細字は現行制度での「特定疾患」に相当

番号 病名 患者数
56 ベーチェット病 18,636
57 特発性拡張型心筋症 25,233
58 肥大型心筋症 3,144
59 拘束型心筋症 24
60 再生不良性貧血 10,287
61 自己免疫性溶血性貧血 2,600
62 発作性夜間ヘモグロビン尿症 400
63 特発性血小板減少性紫斑病 24,100
64 血栓性血小板減少性紫斑病 1,100
65 原発性免疫不全症候群 1,383
66 IgA 腎症 33,000
67 多発性嚢胞腎 29,000
68 黄色靱帯骨化症 2,360
69 後縦靱帯骨化症 33,346
70 広範脊柱管狭窄症 5,147
71 特発性大腿骨頭壊死症 15,388
72 下垂体性ADH分泌異常症 1,900
73 下垂体性TSH分泌亢進症 200
74 下垂体性PRL分泌亢進症 2,600
75 クッシング病 600
76 下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症 400
77 下垂体性成長ホルモン分泌亢進症 3,000
78 下垂体前葉機能低下症 8,400
79 家族性高コレステロール血症(ホモ接合体) 140
80 甲状腺ホルモン不応症 3,000
81 先天性副腎皮質酵素欠損症 1,800
82 先天性副腎低形成症 1,000
83 アジソン病 1,000
番号 病名 患者数
84 サルコイドーシス 23,088
85 特発性間質性肺炎 7,367
86 肺動脈性肺高血圧症 2,299
87 肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症 100
88 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 1,810
89 リンパ脈管筋腫症 526
90 網膜色素変性症 27,158
91 バッド・キアリ症候群 252
92 特発性門脈圧亢進症 900
93 原発性胆汁性肝硬変 19,701
94 原発性硬化性胆管炎 400
95 自己免疫性肝炎 10,000
96 クローン病 36,418
97 潰瘍性大腸炎 143,733
98 好酸球性消化管疾患 5,000
99 慢性特発性偽性腸閉塞症 1,400
100 巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症 100未満
101 腸管神経節細胞僅少症 100
102 ルビンシュタイン・テイビ症候群 200
103 CFC症候群 200
104 コステロ症候群 100
105 チャージ症候群 5,000
106 クリオピリン関連周期熱症候群 100
107 全身型若年性特発性関節炎 5,400
108 TNF受容体関連周期性症候群 100未満
109 非典型溶血性尿毒症症候群 100未満
110 ブラウ症候群 100未満
(以上、110疾患)

注2)患者数は、平成24年度医療受給者証保持者数または研究班による推計

※厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会(第4回) 資料3「指定難病とすべき疾患」

5.医療費助成の対象となる患者の条件
  1. 症状の程度が一定以上の者。「軽症者」は、原則として医療費助成の対象とならない。
  2. 軽症者でも、「高額な医療を継続すること」が必要な場合は、医療費助成の対象となる。
  3. 月ごとの医療費総額が33,330円(自己負担が1万円以上/自己負担3割の場合)を超える月が年間3回以上ある場合と規定。
  4. 指定難病の患者は、指定医療機関の行う医療を受けた場合に限り、医療費の助成が受けられる。
6.医療費助成が受けられる場合の自己負担限度額
階層区分

階層区分の基準

( )内の数字は、
夫婦2人世帯の場合における
年収の目安
患者負担割合:2割
自己負担限度額(外来+入院)
原則 既認定者(経過措置3年間)
一般 高額かつ
長期
人工
呼吸器等
装着者
一般 現行の
重症患者
人工
呼吸器等
装着者
生活保護 0 0 0 0 0 0
低所得Ⅰ 市町村民税 非課税 ~年収約80万円 2,500 2,500 1,000 2,500 2,500 1,000
低所得Ⅱ ~年収約160万円 5,000 5,000 5,000
一般所得Ⅰ ~市町村民税約7.1万円
(~約370万円)
10,000 5,000 5,000 5,000
一般所得Ⅱ ~市町村民税約25.1万円
(~約810万円)
20,000 10,000 10,000
上位所得 市町村民税約25.1万円~
(約810万円~)
30,000 20,000 20,000
入院時の食費 全額自己負担 1/2自己負担

※ 厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会(第4回) 資料3「指定難病とすべき疾患」

指定難病の医療費助成として、患者の自己負担割合は原則2割となります。その上で、スライドの通り、所得に応じた6区分で1カ月における自己負担限度額(外来プラス入院)が設定されています。通常の「一般」の限度額は、生活保護の階層を除くと、低所得から上位所得において、月2,500円から最大で3万円となっています。

また、月ごとの医療費総額が5万円を超える月が年間6回以上ある者、それについて2割自己負担として見れば、自己負担が1万円を超える月が年間6回以上の者は「長期かつ高額」の扱いとなり、「一般所得Ⅰ」以上の場合は自己負担限度額が低く設定されています。さらに、人工呼吸器等の装着者については、「低所得」から「上位所得」まで、自己負担限度額が最高でも1,000円に抑えられています。

すでに特定疾患治療研究事業において難病の認定を受けている患者については「既認定者」として、3年間の経過措置としての自己負担限度額が設けられています。

7.患者の認定新規申請の方法
  1. 患者が医療費助成を受けるため「新規に申請する場合」は、まず、かかりつけ医の紹介などを通して、難病指定医を受診します。
  2. 難病指定医は、診断に基づき、患者に対して、いわゆる診断書に相当する新・臨床調査個人票を発行します。また、そのデータを難病患者データベースに登録し、難病患者登録証明書も発行します。
  3. 患者は、居住する都道府県の保健所等で申請書を入手して記入し、新・臨床調査個人票のほか、住民票、世帯の所得を確認できる書類、医療保険の所得区分確認書類(役所が保険者に確認をとるための同意書)、健康保険証(コピー)を添えて、保健所等に提出します。なお、「高額かつ長期」や「軽症者の特例」に該当する場合には、医療費の領収書なども必要になります。
  4. その申請を受けた都道府県では、設置している難病認定審査会において、医療費助成の対象患者であることを認定します。また、その認定した者に対して、医療受給者証を交付します。この医療受給者証の有効期間は1年間となっています。このように1年で区切っているのは、定期的に患者のデータを収集するとともに、患者の所得の変化に対応するためです。
8.医療費助成が受けられるのは難病指定医療機関で受けた医療に限られる
  1. 指定難病患者が医療費助成の申請を行うために必要な診断書は、難病指定医および協力難病指定医でないと作成することができません。また平成27年1月からの新制度では、指定難病の医療費助成の対象となるのは指定医療機関で受けた医療に限られています。
  2. そこで、新制度では、患者の身近な地域において、医療費助成の対象となる医療を行う体制を確保するため、都道府県がかかりつけ医などのいる医療機関を含むように、指定医療機関を幅広く指定することになっています。つまり、難病治療を含む日常の診療は、指定医のほか、指定医と連携することでかかりつけ医も行うことができるわけで、例えば、難病指定医と内科のかかりつけ医が連携することで、患者の負担を軽減することも可能になります。
  3. 必要に応じて難病指定医も診療を行い、それが著しく困難な患者に対しては、難病指定医が巡回して診療を行う取り組みなども検討されます。
  4. 指定医療機関のかかりつけ医などが、前にも説明したように、一定の研修を受けて協力難病指定医となれば、患者は身近な医療機関で医療費助成の更新申請も行うことができるようになります。
9.難病指定医になるには?
  1. 平成27年1月からの新制度における指定医には「難病指定医」「協力難病指定医」の2種類があります。指定医になるには、都道府県に申請をして、都道府県知事の指定を受けます。その指定の有効期間は5年間で、その後、更新をすることになります。
  2. 「難病指定医」の主な役割は、難病を正確に診断し、適切な治療方針を立てることです。新・臨床調査個人票(診断書)を作成し、指定難病患者であれば医療費助成の有無にかかわらず、全員の患者データを治療研究の推進や医療の質向上を目的としたデータベースに登録します。指定医になるには、特定の学会の専門医資格を持っている、あるいは一定の研修を受けているといった要件が設けられています。また難病指定医は自動的に小児慢性特定疾病指定医とみなされるわけではありません。あらためて、小児慢性特定疾病指定医の申請をする必要があります。
  3. 「協力難病指定医」については、指定難病患者が医療費助成の更新を申請する際にのみ、新・臨床調査個人票(診断書)を作成することができます。データベース登録を行うのは、難病指定医と同様です。協力難病指定医は、1~2時間程度の研修(都道府県知事が行う)を受けていることが要件の一つで、特定の学会の専門医資格などは必要ありません。5年以上の臨床経験のある医師であれば比較的容易に指定を受けることができ、地域医療の推進のため、患者の身近なかかりつけ医などが指定を受けることが想定されています。
10.今後の制度的な見通しー第2次実施の予定
  1. 指定難病検討委員会の検討・選定に基づき、平成27年夏頃に、第2次実施分として約190の疾病(約30万人)を新たに指定し、指定難病は約300の疾病、約150万人となる予定です。
  2. この第2次実施分では、診断基準に準ずるものがあるにしても、第1次実施分と比べると診断基準が必ずしも明確でない難病が、主な対象となります。

※本稿は「厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会(第1回)資料」を元にして腎臓ネットがまとめたものです。不明点は厚生労働省難病対策および難病情報センターの各ホームページをご参照ください。