
腎不全もしくは尿毒症
慢性腎臓病が進行すると、腎臓の機能が低下してきます。腎臓の働きが低下して、十分に働けなくなると腎不全(じんふぜん)または尿毒症(にょうどくしょう)という状態になります。たいがいはeGFRが10%以下特に6%以下になると症状が出てきます(クレアチニン値で言うと8mg/dl以上、尿素窒素値では80mg/dl以上)。尿毒症になると血液は毒素の為に酸性に傾きだるさや食欲不振といった症状に始まり、吐き気や息切れなどと悪化していきます。体に過剰な水分と塩分がたまる(溢水と呼ぶ)ことで血圧は上昇し、心不全を起こすようになります。このような尿毒症になる前に腎臓の働きを補う腎代替治療(じんだいたいちりょう)として、延命のためには透析療法か腎移植が必要になります。ただし高齢な場合などでこうした延命治療を行わずに生命を全うしたいというご本人の意思がはっきりと示されている場合には、こうした腎代替治療を行わずにできるだけ症状を軽くする終末期医療も選択の一つとなります。
血液透析けつえきとうせき


腹膜透析ふくまくとうせき


腎臓移植じんぞういしょく


終末期医療・延命を拒否する
高齢な場合などでこうした延命治療を行わずに生命を全うしたいというご本人の意思がはっきりと示されている場合には、腎代替治療を行わずにできるだけ症状を軽くする保存的な治療も選択の一つとなります。がん患者の終末期医療と同じ考え方です。実際に高齢で脳梗塞、高度の認知症、肺気腫、心臓病、足の血管病、寝たきりなどの合併症がある場合に透析を行っても余命がそれほど伸びない、場合によっては逆に短くなる場合が多いのも事実です。尿毒症で亡くなる場合には息苦しさ、吐き気、痛みなどが耐え難い場合があるので麻薬を使って症状を軽減します。ただ透析を受けること自身はそれほど苦痛を伴わないことが多いので、それを本人によく理解していただいた上で明確な生前の意思(リビングウイル)を確認することが必須です。医師の立場から言うと透析治療は患者の同意が必要な医療行為です。
執筆:塚本雄介 2022.3.1